施設長の独り言
第27話 群馬県知事選挙、参議院選挙を考える
@群馬県知事選挙は、大沢候補が現職の小寺候補に13,000票余りの差を付け当選した。今回の知事選は2人の間に、更には山本候補を加えた3人の間にも政策上の大きな争点はなかった。実際、私も誰に投票して良いか分からないまま投票日を迎え、自分自身の社会的な身分を考慮して、社会福祉法人理事長を務める大沢候補に一票を投じた。
選挙告示前後では、小寺候補の知名度は他候補を圧倒していた。この差を、17日間の選挙戦で大沢候補はどのように奪回していったのだろうか。
報道等で知る事実としては、自民党の組織力を生かし、更には国会議員や県会議員の勤務評定をするという締め付けをはかったことで組織の引き締めにつながり当選につながった、と言われている。しかし、これだけでは逆転には繋がらないであろう。一般県民の支持無くして選挙に勝つことは出来ない。
小寺候補が4期知事の座にあった間、目立った失政はなかったものの、県民の心を揺さぶることもなかった。確かに財政健全化に力を注ぎ、公債比率は全国最下位グループにあり、「県民債」なるものを日本で初めて発行し県民の郷土意識を高めた。だがこれらも広く浅く程度にしか県下に目配りをしたに過ぎず、県民には「もうそろそろ」という気持ちを起こすことに繋がり、他候補の多選批判が案外的を得たものと思われる。
小寺候補が、後藤知事室長を副知事に任用することにこだわり続けたのも県民には受入難かったのではと思う。地方分権の時代に、地方のことは自分たちで何とかしよう、しなければならないと思う時代にあって、中央官僚出身の小寺氏が、中央官僚出身の後藤氏を副知事にあて、自分の後継者に据えようとする魂胆を県民に見透かされたのだと思う。東毛地区で、小寺候補は大沢候補に39,317票もの大差をつけられ、その他の地区でも大沢候補が善戦した。県政史上初めて東毛から知事を出そうというスローガンに東毛県民が敏感に反応したのは、中央官僚出身者はいらないという県民の意思の表れだと思う。
知事に選ばれた大沢氏は、他の誰もあてにすることなく群馬県は自分たちで守るという県民の意識に従い県政にあたらなければならないだろう。
A第21回参議院選挙は、民主党が60議席を獲得し自民党は30議席台と惨敗し、与党(自民・公明)は過半数を大幅に割り込んだ。自民党が圧勝した2005年の郵政選挙とは逆の結果になった。国民は自民党に「No」を突き付けた訳であるが、何に対して「No」と意思表示したのだろうか。巷言われているところでは、公的年金の記入漏れが5000万件にものぼり社会保険庁の不手際にも助けられ民主党が圧勝した、ようである。政府・自民党も次々に対応策を立て挽回を図り、安倍首相も誠意を見せ支持率上昇を期待したようだが、そうはならなかった。確かに年金問題も大きく、自民党惨敗の原因だと思うが、民主党の選挙コピーである「生活が一番」というのも的を得たのだと思う。
小泉政権の5年間に生活を脅かす政策が立て続けに実施された。国民が反発する度合いが高い政策にもかかわらず小泉首相は戦後歴代第3位の長期政権を樹立し任期を終えた。安倍首相に代わったとたん、国民はこれらの政策が生活を脅かすことに気づく。小泉首相ではしょうがないけど安倍ではチキンと説明してもらわないと困る、と思ったんだと思う。その政策を順次述べたいと思う。
@郵政民営化について。地域密着だった郵便局がどうもよそよそしくなった。民営化されたら俺んちの郵便局が無くなってしまうのではないか、と思う人たちが農山漁村や過疎地に多い。
A年金改革について。国民年金保険料は、05年4月から毎年280円ずつ上がり、17年には月額16900円に固定する。また厚生年金保険料は、04年10月から保険料率(労使折半)を毎年0.354%引き上げ、17年9月から18.3%に固定する。更には年金給付では住民税が大幅に増えた。負担が増え、年金手取額が減っているのに社会保険庁の不手際や不祥事が続けば腹が立つのはもっともである。
B医療改革について。サラーリーマンの医療費負担が2割から3割に上がり、70歳以上の高所得者(夫婦で年収621万円以上)の医療費負担が2割から3割に上昇し、08年度からは70〜74歳の高齢者の負担額も1割から2割に上昇する。これでは通院を我慢しなければならないサラリーマンや高齢者も続出する。
C介護保険改革について。特別養護老人ホームなどの介護保険適用施設の居住費と食費を介護保険適用外としたことにより自己負担額が大幅に増えた。いくら施設を造ったところで利用できない高齢者も増える。
D所得税減税廃止と法人税大減税について。個人所得税が最大20%減税されていたのにこれがなくなった。これに対し、法人税が1.4兆円もの大減税になった。個人所得が企業のグローバル化に伴い増えていないのに所得税減税廃止では個人消費も増えない。
E生活保護費や児童扶養手当削減について。最後の拠り所としての生活保護の適用が厳しくなり、更には加算もなくなり踏んだり蹴ったりである。
以上述べてきたように、小泉政権において国民の負担が増し、様々なところで格差が広がった事実を当初安倍政権や自民党は認めようとしなかった。認めなければ投票でそれを認めさせる行動に出たのが今回の参議院選挙だと、私は思う。
平成19年8月31日 小林 直行
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